2014年10月26日日曜日

VHSテープを巻き戻せ! / ナニワのシンセ界

 渋谷で「VHSテープを巻き戻せ!」を観てから約2ヶ月、同じ気分になるだろうな、と思いながらも、題材への興味に打ち勝てず「ナニワのシンセ界」を観た。同じ気分になった、が。

 「VHS」は要するにノスタルジーを90分語り続けるドキュメンタリーだった。「自分たちはVHSで育った」「ホームビデオ文化が花開いた」「DVDになってない作品も沢山ある」異口同音に主張や思い出が繰り返し。さっき聞いたような主張が脈絡無く再登場する場面も多く、90分が長く感じる。飽きるんだよ。

 確かにデジタル化されずに消えた(ゴミのような)作品も山ほどあるのだけど、残念ながらあらゆる意味でビデオテープにはDVDやBlu-rayより優れた面が無い。アナログレコードとは違うのだ。彼らはひたすらノスタルジーを語り、そこから新たな文化が産まれる可能性は全然見えてこない。

 VHSでオリジナル(ゴミ)作品を撮り続けるおっさんが登場する。「VHSは手軽だから考えずに撮れ!撮り続けろ!」と主張するが、残念ながら今やデジタル機材の方が遥かに安価で、手軽だ。

 「シンセ界」も作りは似通っている。こちらはノスタルジー要素は抑え目にしてはあるものの、代わりに「大阪の文化」の主張が強く出ていて、やはり同様に似たような話題が繰り返し登場し、飽きていく。

 致命的なのは、大阪の、伝統に根ざした面や、人と違うこと、面白いことをしたがる性質、ハブとして様々な文化が集まってくる土壌、という部分を語るのに、東京との比較が具体的に為されないこと。彼らは「東京と違って」と語りたがるワリには、実際に東京のシンセ文化はどうなのか、という部分が一切見えて来ない。だからその辺の主張は空虚に見えてしまった。

 シンセ好きによるシンセ好きの為の映画、って側面は良し悪しだろう。基本的な説明はすっ飛ばして中核から入るから、この映画を切っ掛けに「シンセ界」に入り込む可能性は皆無に近い。完全に内側の人間だけがターゲットなのだな。だから音楽の話題は殆ど登場せず、あくまで機材の話に徹する。YMOだけ少し出てくるのには苦笑したけどね。

 とはいえ、VHSとの大きな違いは、アナログシンセサイザーは現役の機材、文化であるということ。彼らには「これを使ってやりたいこと」があって、それをやっている。この映画はアナログシンセサイザーの「今」を語っているのであって、ノスタルジーの話では無い。この差は大きい。

 だってさ、なんだかんだで観ててシンセのつまみグリグリ回したくなったもんね。久々にVolca引っ張りだして遊ぼうと思ったよ。

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