2014年10月19日日曜日

The Yardbirds

 ブルーズ至上主義者のエリック・クラプトンはヤードバーズにとって邪魔ものであった、少なくともバンドの進化の妨げになる存在であった、という解釈。

 エリック時代に残された音源の大半はライヴ。それ以外は2枚のシングルと、64年までに残された数曲のデモ録音のみ、ということになる。スタジオ、ライヴ共に基本的にブルーズ、R&Bマナーに則ったスタンダードな演奏で、勿論エリックの志向にも沿ったものだったと思われる。シングルのGood Morning Little Schoolgirlはかなりポップなアレンジになっているのだけど、これに対してエリックが異論を唱えた、という話も無いから、ある程度の割り切りはあったのかもしれない。

 ただ、おそらくバンドはもっとメジャーに、ポップに、そしてアーティスティックな方向に進みたかったんではないか。ポップとアーティスティックは矛盾しないのだけど、ブルーズを追求すること=アーティスティックな姿勢、と思っていたギタリストはこれを良しとしない。かくして、バンドはエリックを切り捨ててでも「ポップでアーティスティックな」グレアム・グールドマンによる新曲For Your Loveの録音を敢行する。

 ここから3枚、グールドマンの提供曲によるシングルを連発するのだけど、Heart Full of Soulからはエリックよりずっと柔軟で、ロック的なギタリスト、ジェフ・ベックを迎えることになる。それによってバンドはエリック時代に行っていたブルーズ/R&Bの模倣という領域から抜け出すことが出来たんじゃないかと思う。

 後に10ccを結成するグールドマンの曲はこの時代から既に所謂「ひねくれポップ」の味わいを出していて、結構狂っている。それを受け止めるにはエリックでは不十分だった。そして、そのエッセンスをバンド側が吸収していく過程はEvil Hearted YouのB面、Still I'm Sadを経て、必殺の代表曲Shapes of Things、そしてOver Under Sideways DownとアルバムRoger the Engineerへと、刻々進化するオリジナル曲に表れている。

 ここまでのオリジナル曲全てにマッカーティとサミュエル=スミスの名がクレジットされてることも重要(アルバムの収録曲は全員の共作名義)。なんかこの時代、ベックが曲書いてるとか勘違いされてそうな気がするけど、実はこのあと、ペイジ加入に至ってもバンドの中心人物はレルフとマッカーティなんだよね。Shapes〜がレルフ/マッカーティ/サミュエル=スミスって名義なのは少し驚いたな。

 さて、ヤードバーズを追い出された(という認識は誰にも無いだろうが)エリックはと言えば、ジョン・メイオールのバンドに加入、取り立て観るべきところのない凡庸なブルーズの模倣作品をリリース。しかし、自分が抜けたバンドがRoger the Engineerをリリースしたのを見て「これではマズいのではないか」とようやく気付いて、ポップでアースティックなロックバンド、クリームの結成に至るのだ。こう解釈しないとクリームのデビューシングルが「包装紙」ってコトの説明がつかないのよね。

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