2014年10月14日火曜日

バルフィ! 人生に唄えば

 可愛い映画だったが、上映時間が可愛くない。長い。2時間半、ってインド映画としては短めの部類に入るらしいと聞いた時は開いた口がふさがらなかったが、まあ、実際問題としてはテンポも良かったし、楽しかったし退屈はしなかった。尻は痛くなった。

 聾唖の青年バルフィ(本当はマルフィなんだけど、発声が不自由な彼が発音するとバルフィに聞こえる)と二人の女性を巡るラブコメ。一人は婚約者がいるにも関わらずお互いになかば一目ぼれしてしまった美女シュルティ、もう一人はお金持ちの一人娘で自閉症のジルミル。まあ3人揃って容姿がもう素晴らしいんだがそれはまあインド人補正プラスファンタジー映画、ということで。

 ファンタジーなんだよね。まず、この映画にリアリズムを求めたらそれは完全に間違いだし、楽しめない。ネットのレビューに「バルフィのやってることは犯罪で、容認できるものではないし感情移入できない」とか逆に「障害者は無条件でいい人のような描写がされている」みたいな的外れなレビューがあったけども、まああなたは映画を楽しむのには向いてないからご自宅でニュース番組だけ見ていなさい。

 映画はグランド・ブダペスト・ホテルのように三つの時間軸で構成されている。現代と、1972年と、1978年。違うのは過去の二つの時代はともに事件が動いていること。要するにシュルティとの恋を描いたのが72年編、ジルミルとの愛を描いたのが78年編、そして、バルフィとジルミル以外の登場人物たちが何故かインタビュー形式で当時のコトを語る現代のシーンが挿入される、という構成。この現代のシーンの意義がよくわからないんだけど。まあ、幸せなエンディングを描くためのものだったのかな?それにしても現代シーンでの登場人物たち、とくに主役級3人の老けメイクの雑さには笑う。ドリフのコントかよ!っていうレベルでな(笑)まあ、ファンタジー。

 っていうね、突っ込みどころは沢山あるんですよ。そもそもが二つのラヴストーリーを詰め込む必要があったのか、ってところからしてね。まあ確かに後半部分、ジルミルがシュルティに嫉妬するシーンはその結果ジルミルの失踪につながるから重要なのは事実だし、耳の聞こえないバルフィにジルミルの呼び声を伝えるべきか逡巡するシュルティのシーンも切ないし、テーマにも直結するいいシーンだから無意味ではないのだけどね。

 でもまあ、突っ込みどころはスルーしつつ笑って楽しむのがこの映画の正しい鑑賞法だよね。

 「この映画はフィクションでありファンタジーです」ということの表現として音楽が使われているのは面白い。突然歌われてストーリーを説明する劇中歌もさることながら、BGMを演奏する楽団が画面に映り込むこと。しかも彼ら、時間を超えて同じ場所で演奏し続けてたりする。画面だけ転換して楽団は固定されてるわけ。
 しかも音楽がいい。劇中歌もポップで、しかもインド楽器がいいバランスで使われてて聴き応えがあるし、BGMはインド風味を持ちながらどこの国の人でもノスタルジックに感じるような、ミュージックホール風とかにも近いのかな。そういう空気があって心地よい。

 この映画は徹頭徹尾ファンタジーだ。ラストシーンは危篤のバルフィにジルミルが寄り添い、そのまま一緒に息を引き取る。直前まで元気だったジルミルがここで死ぬ理由は全く無いし、そこにリアリティなんか一切無いんだけど、これはおとぎ話。ジルミルが死んだ理由は「そう望んだから」「バルフィと一緒に生きて、一緒に人生を終わろうと思ったから」それで充分だ。

 あとパシリム主義者的には、バルフィとジルミルがキスしないでおでこコツンやるのはポイント高いよな!ちなみにシュルティとはキスシーンがあって、それはそれで興味深い。

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