2014年10月15日水曜日

フランシス・ハ

 俺らしくないセレクトなのかな?なんか「女の子が観そうな映画」(偏見)を観た。意外に男の、しかもひとりの客が多かったけど。土曜の昼間で、カップル居なかったなー。

 っていう偏見を持って観に行ったこの映画、奇妙なタイトルと、予告編のスピード感(白黒のせいでA Hard Day's Nightっぽいとか騙されかけた)、それから主題歌のModern Loveのせいで興味を持ったのだけど。

 ストーリーにも映像にもスピード感があって、感覚としては凄く観やすい(俺のような集中力のない映画初心者には特に!)作品だったんだけど、そのスピード感が徒になった部分もある。基本的に場面や時間の転換がやたらにスピーディーで、時間の進み方がところどころで解らなくなる面もあって、そのうえ主人公フランシスは基本的に行動がいきあたりばったり、しかもこの女、嘘つきというか見栄っ張りなので、観ている側にも彼女の置かれている状況が把握しきれなくなってしまう。

 その結果、終盤での親友ソフィとの再会、和解を経て、最終的には(おそらく)チラシの煽りにもある「ハンパなわたし」を受け入れて身の丈にあった生き方を再発見、そして成功、という流れが、観てる最中にはとても唐突なものに感じてしまうのね。あとから脳内で流れを補完する伏線というか流れはちゃんとあって、「ああ、そういう流れでの自己肯定なのか」って解るんだけど。俺の頭が悪いのか?

 「ハンパなわたし」であるところの主人公は前述の通りガチでハンパ者で、享楽的で行動が行き当たりばったりで、見栄っ張りで社交的だけど空気が読めなくて、自己主張が強くて寂しがり屋でだらしなくて友達に依存してて間が悪くて、ガキなんだよね要するに……ってかね、俺を観てるようで、もう観ててしんどくなってくるんですわ。ホント、こいつの言動観てるとイライラしてくる。ただ、よく言われる「不器用」ってのは違うと思うし、「こじらせ女子」って表現にもなんか違和感あるな。むしろ(いい歳して)天真爛漫すぎてこじらせ切ってない、と言うか……「間が悪い」って書いたけどそれは彼女の性質と言うより「そういう時期」っていうところもあるしね。

 いや、実際のところ基本的にはいい子だし、容姿もなかなか可愛くて整ってるんだけどね。体型が微妙にもっさりしてるのも絶妙だよなぁ。

 まあ、そういう意味で、主人公もそうだし、脇も含めてキャラクター描写はなかなか優秀だと思う。みんな適度にキャラが立っていて、こいつはこういう奴、ってのがすぐに解る。前述のソフィが魅力的だったな。フランシスと同レベルで楽しく暮らせる程度には駄目な奴なんだけど、ちょっとだけ真面目でしっかりしていて知性もある。だからフランシスは彼女に依存できてしまうんだけど、その差異の描写は絶妙だったと思う。あと、それなりに知的な眼鏡美人(知的すぎないし、美人過ぎない)なんだけど、知性を眼鏡じゃない部分で感じさせてるのは素敵だったな。まあ、ある人に言わせると「出版業界によくいるタイプの知的なブス」らしいけど(笑)あ、因みに、スティングの娘(!)だそうです。

 すでに触れたとおり、俺はこの映画を感じ取りきれなかったんだけど、「ターニングポイントは母校でのバイト」ではないか、と言う人がいた。成る程、と思いつつもコレはひとの視線だから俺は細かく書かないし記憶があやふやで書けない(笑)けど、やっぱり俺がフランシスに自分を重ねてしまう程度に今現在駄目であること、つまりフランシスが劇中で通った道を通過しきっていないことがやっぱりこの辺を感じきれなかった理由かなあ、って思う。
 まあとりあえず、学校の(寮の?)廊下で子供が泣いてるシーンは台詞も状況説明も全然無いけど、フランシスが他者との関わりを意識したことを表現している重要なシーンだと思う。

 音楽にも触れよう。Modern Loveをバックにフランシスが走り踊るシーンは流石にニコニコしてしまったし、T. RexのChrome Starがちょこっと流れたのには意外にゾクッときた。チョコレート・ドーナツでの扱いが悪かったからさあ(笑)溜飲が下がった。パリのシーンでのHot ChocolateのEvery1's a Winnerも印象的だったな。ってか、この曲知らなくて、でも凄い気に入って後で調べたんだけど。思わずベスト盤を買ってみたらこの曲が一番好きだと言うことが解った(笑)

 でもなにより、彼女が男友達の家に転がり込むシーンでちょっと流れたポール・マッカートニー79年録音の未発表曲、Blue Sway。McCartney IIのデラックス盤リリース時に登場したリミックス(86年)なんだけど、ポールはたまにサントラ用に突然未発表曲を提供したりするから油断できないんだよね。コレはデラックス盤が先に出てるからいいんだけどさ。いや、マニアックだし大好きだし、すげーニヤニヤしちゃった。

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