2014年9月13日土曜日

ジャック・タチ映画祭

 ジャック・タチにハマった。

 ちょっとした切っ掛けで、ジャック・タチ映画祭を観に行ったのが切っ掛け、というのはこの時期語っているんだから当然のことであり、わざわざ書くような話ではない。ソフトがねー、全部廃盤なんだよねー。DVDボックスがプレミア価格で何万円もするって現状どうにかしてほしいなー、って話は普通最後の締めで書く話であって、ここにコレを持ってきてしまってどう締めるのか見当もつかない。

 フランスコメディの大物、的な先入観で観に行ったので、最初は要するに、パイソンやSNLまで行かないにしても、結構な爆笑を期待して行った。前情報はある程度仕入れて行ったんだけど、うっかり時代をちゃんと確認しなかった。というより、まさかあんな寡作な人だと思わないから、プレイタイムを基準として60〜70年代が主な活動期間だと思ってたのね。だからまあ、期待値としてはプレ・パイソン&ボンゾズの「Do Not Adjust Your Setよりもう少し笑える感じ」くらいのところだったかな。

 最初に観たのは短編2本と「ぼくの伯父さんの休暇」。短編2本を観た時点で少し不安になる。「クスリ」とはするけど、思ったより笑える感じじゃないぞ。そして1本目の「左側に気をつけろ」を観て思っていたより古い映画であることを知る。チャップリンあたりをイメージしておけば良かった筈なのだけど、チャップリンも全然知らないのだ。

 とはいえ、「ぼくの伯父さんの授業」での映像美には感心したし、「ベタなギャグの手法を解説するギャグ」というコンセプトはモンティ・パイソンでも同様のネタを観た(Secret Policemanの舞台の奴だったかな)のを思い出したし、この時点で「じわじわくる笑い」であることには気づき始める。

 そして本編、と言うとアレだけど「ぼくの伯父さんの休暇」。タチ演じるユロ氏(べつに誰の伯父さんでも無い)は必ずしも主役ではなく、夏休みの避暑地という空間が主役。そこを舞台にさまざまな人々が起こすコミカルな出来事の数々……と書いてしまうと確かに「クスリ」な映画なんだけど、ってか、序盤はそういう感覚で観てるんだけど、ただ、この映画の場合この「クスリ」が蓄積するんだよね。

 一か所で「クスリ」としてリセットして次の「クスリ」があって……という流れではない。いや、そうと言えばそうなんだけど、リセットが無い。そもそも、登場人物が一人残らずどうしようもないボンクラで、どいつもこいつもまともなコトを一切しないので、一瞬の途切れも無くトラブルが起こり続けているから、結局その一つの「クスリ」はエスカレートしないんだけど常に蓄積されていくわけ。で、観てる側は心が既に笑ってるから畳みかけられると徐々に「クスリ」から「ふふふ」「ははは」「わはははは」へと進んでいくわけだな。で、終盤で満を持してエスカレートしたドタバタが登場するとこっちはもう「ぎゃはははは」まで簡単に到達しちゃうワケだ。

 その後「プレイタイム」と「ぼくの伯父さん」も観た。「コメディ映画」と捉えれば多分「休暇」が圧倒的に笑えて、「プレイタイム」はどっちかと言うとアートとしてその凄い映像を鑑賞する映画。それでも登場するボンクラどものドタバタにはかなり笑える(特にナイトクラブのシーンは滅茶苦茶)。でも、他の作品を観てからじゃないと楽しみづらいかもしれないな、とは思った。しかも他の作品を観て、先入観も一旦リセットしてから、かな。難しいとは思わないけど。

 「ぼくの伯父さん」はもう少し解りやすい。ストーリーらしきものも他の2編に比べてかなりはっきりしてるし、普通の「コメディ映画」として楽しみ易いんじゃないかな。そのぶんナンセンスと言うか、狂いっぷりは抑え気味にも見えるけど。でも「プレイタイム」の前触れとも言えるレトロフューチャーでポップな映像美も堪能できるし、ギャグもバランスいいし。逆にいえばまあ、中庸なのかな。タチ入門編?

 で、ここまで書いてしまってなんと朗報。今回の映画祭で上映した全作品とその別ヴァージョンなどを収録したBru-Rayボックスの発売が決まったのだ。既にヤフオクではプレミア品の値崩れが始まっている。ざまあみやがれ、ってなもんだ。この文をどう締めるのか問題も解決である。

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