2014年5月28日水曜日

Status Quo / Dog of Two Head

中途半端なアルバム、と言わざるを得ない。前作を「過渡期」と呼んだけど、じゃあここで所謂Quoのブギーサウンドが完成したか、と言われるとやっぱりそれは「まだもう少し待って」と答えるのが普通だろう。何が良くないって、小曲Na Na Naの繰り返し。ところどころに短縮ヴァージョンが現れて、最後にフルヴァージョンを聴けるんだけど、フルで聴いても小曲で、最初のショートヴァージョンと全然印象が変わらない、という。だから同じ曲が3回入ってるだけって印象になっちゃうのね。これはだれる。

 楽曲はだいぶ焦点が定まってきているが、UmleitungやSomeone's Burningは前作を引きずっている。特に前者は前作を最後に脱退したロイ・ラインズが作曲に名を連ねていて、アウトテイクか、または彼の脱退前に作られた曲ということになり、辻褄も合う。Something's Going on in My Headもブギー系のリズムながらPye時代独特の歪み感を持っていて、この3曲全てにランカスターが作者としてクレジットされているのもヒントになるように思える。彼の楽曲は後年に至るまでへヴィなのが多く、所謂ハードロック路線に一番熱心だったのかもしれない。

 で、それ以外の曲を書いているのがロッシ/ヤングのコンビ(GerdundulaはManton/Jamesとクレジットされてるが、実は彼らの変名)。アコースティックなNa Na NaとGerdundulaは異色にも思えるが、やはりRailroadとMean Girlの2曲(そして同時期のシングルTune To The Music)が「俺たちの知ってるStatus Quo」の原点と言える。

 これらはDown the DustpipeやLazy Poker Bluesの路線を引き継いだものだけど、今回はオリジナルとしてやり始めた、というのがポイント。ミドルテンポのRailroadはRoll Over Lay Downを経てWhatever You Want等に連なっていくし、Mean GirlはSofter RideあたりからWhat You're Proposin'まで、アップテンポシャッフルの原点と言えよう。これにIn My ChairとShy Flyあたりを加えると、ほら、出揃った感がある。

 Pye後期を準備段階として、このあとハードロック/プログレの名門Vertigoに移籍することになるのだけど、実は試行錯誤はもう少し続く……という話は、次の原稿で。

2014年5月27日火曜日

Led Zeppelin / The Crunge

俺だってそうですよ、最初は理解できなかった。変な曲だし、つまんない曲、っていうかハードロックじゃないし。捉えどころないし、乗れないし。何が良いのかさっぱり。え?シングル?B面とは言え?え?A面はD'yer Mak'er?馬鹿にしてるのかな。いや、これに関しては馬鹿にしてたのかもしれない。Zep流のレゲエとZep流のファンクのカップリング。ハードロックバンド?誰がそんなこと言ったんだい?ははーん、さてはお前ら、Led Zeppelin IIIも駄目だったクチだろう?

 まあ、痛快だよね。

 英国のミュージシャンって結局人を馬鹿にしてるんだよね。悪気のある冗談に着いて来れる奴だけ着いて来いよ、っていう空気が常に流れてる。ビートルズからしてそうだった。俺の好きなバンドはみんなそうだ。俺はそれに慣らされてるから、いつの間にかこの曲も大好きになっていた。英国ロック聴いて慣らされたんじゃないんだよ。多分、ピーターラビットの絵本の時点で下地が出来てたんだ。お母さんありがとう。

 閑話休題。

 The Crungeが好きになったのはやっぱりドラマーの意地、っていう側面もある。このビートを叩きこなせるようになったら格好いい、っていう、意地って言うより見栄かもね。9/8拍子っていうハードル、それでいてファンクのグルーヴであること、ハイハットの複雑なフレージング。こなせたら格好いいじゃん。出来るだけクールに叩かなきゃいけないのよ。しかもボンゾだからヘヴィである必要もあるし。

 最初にコレでジャムれた時は最高だったなぁ。ニヤニヤしちゃった。全然クールじゃないですね。

2014年5月18日日曜日

チームしゃちほこ / いいくらし

「俺の藤井」っていう、知らない人が見たら意味不明な名称のイベントがあって、ってか俺も「藤井」が何者か知らないレベルなんだけど、まあ要するにももクロを擁する事務所の所属アイドルが一堂に集うイベントで、そこで(と言っても映画館でライヴビューイングを見たんだけど)この「チームしゃちほこ」を見たのがコトの始まり。

 現場の音響のせいか、音が悪くて最初なんだかよく解らなかった。でもイントロの途中で「アレ?なんだこの音」ってなった。要するに、90年代に俺が慣れ親しんだハードコアテクノのサウンドそのものだったわけだ。XLレーベル直系、って感じのサウンドに頼りないアイドルの歌。勿論TB-303(風?)のアシッド音。周囲はアイドルファンなので全然踊ってなかったんだけど、間奏で拳を挙げひとり「Aciiiiiiiiddddddd!!!!」と叫び浮きまくる俺の姿がそこにあった(立ち上がってはいなかったけどね)。

 1月のイベントから4ヶ月待って、この曲が遂にリリースされた。ちゃんとした音で聴くと、イントロは完全にD-Mobの引用であることが解る(サンプリング、そのまま使ってるのか?)。なるほど、Twitterで指摘してる人がいたけど「いいくらし」ってのは「Eくらし」って意味なのね。確かに歌詞カードにはそう表記してあるし。ShamenがE the Good(Ebeneezer Goode)と歌ったのと同じ領域に名古屋の中高生がいる。

 そう思って見ると、PVでゆらゆらしながら電車のつり革に掴まるメンバーの姿がエクスタシーキメてラリってるように見えてくるから面白い。と言ったら明らかに言い過ぎなんだけど、PVのラスト、夢から目覚めるシーンも意味深に解釈できるし、映像もサイケデリックな感じに思えてくるから、この辺はある程度、やり過ぎない程度に狙ったんじゃないかと。実際には狙って無くても狙ったと解釈した方が楽しいからそう思っておこう。

 とはいえ、特別なオリジナリティがあるでもなく、要するに単なるパスティーシュである、ってのもまた本当なわけで、今は凄く楽しいけど多分今後もの凄い勢いで飽きてしまうんだろうなあ、と言うのも容易に想像が付くのが、まあ残念と言えば残念だよね。

2014年5月14日水曜日

Status Quo / Ma Kelly's Greasy Spoon


 一般的にはQuoがブギー路線へシフトした最初のアルバム、と捉えられているけど、それは本当だろうか?っていうか「違うよね」ってのが結論で、本稿では「これってどういうアルバムなのか」って話をする。ある意味、こいつはかなりの異色作なのだ。

 ご存知の通り、前作Spare Partsまではサイケデリックなポップ路線で売っていたQuo。まあ1967〜68年という時代を考えれば順当なサウンドなんだけど、これはプロデューサーによる「押し付け」であり、本人たちが目指した路線は違う(=ブギー)、というのが一般的ないわれ方だった。

 本当か?

 そもそもQuoがSpectresとしてデビューした時の路線は、所謂ブリティッシュR&B、解りやすく言えばモッドなサウンドに近いものだった。コレが66年ごろ。で、The Status QuoとしてPictures Of Matchstick Manをリリースしたのがサイケ全盛の67年で、まず重要なポイントはこの曲がロッシのオリジナルだった、ということ。つまり、このサイケデリックな曲をフランシス・ロッシは意図して作曲したのであり、モッズ風から時代に合わせてサイケ路線にシフトしたのはQuo自身の方針だった、と考えた方が自然だ。
 違和感があったとすれば、ほぼ焼き直しのBlack Vails Of Melancoryをリリースしたり、進化の無い2ndアルバムを作ったり、という部分じゃないんだろうか。サイケが嫌だったわけではなく、サイケから先に進もう、という意思があったということ。

 要するにこの時代、Status Quoは偉大なるマンネリバンド(実際には後年も違うんだけどね)ではなく、時代に合わせて先を狙っていく若手バンドだった、ということだ。

 さて、本題。

 68〜9年にもなると、ビートルズのWhite AlbumやストーンズのBegger's Banqutteも出て、世間はバック・トゥ・ルーツという雰囲気になっていく。そこでQuoも同じようなことを考えても全く不思議ではない。で、そこで彼らが選んだのは必ずしも「ブギー」ではなかった。

 アルバムに先行するシングルは、サイケ色は残しつつもぐっとヘヴィーになったエヴァリー・ブラザーズのカヴァーThe Price Of Love、後のブギー路線に近いDown The Dustpipe、そして同じくハードブギーをイメージさせる(でも少しサイケ)なIn My Chair。

 で、アルバムに行くと、まずストレートにブギー路線なのはSpinning Wheel Blues、Junior's Wailing、Lazy Poker Blues、そしてGotta Go Homeの4曲であることに気づく。しかもうち2曲はカヴァー。11曲(メドレーを分割して考えて)中で大きな位置は占めるものの、どうもこの路線は、狙ってはいたが試行錯誤の段階だったのでは、という推測も成り立つ。次作ではこの辺がもう少しシャープに聞こえてくることになる。

 むしろこのアルバムでは後のQuoから消えて行ったへヴィな16ビートノリの、まさしく69年型の「ハードロック」的な楽曲が目立つ。(Daughter)、(April) Spring, Summer and Wednesdays、Lakky Lady、Need Your Love、Is It Really Me、これらの曲のグルーヴは後のQuoからはほぼ消え去っていくもので、この時期(次作にも少し現れる)までしか聴くことができないものだ。

 そうしたところで同時代のロックバンドを聴くと、こういうグルーヴ感(ただしQuoのものは若干稚拙、というか向いてない感がある)はむしろ一般的で、シャッフルのブギーやブルーズ曲を味付けにしているパターンが多い。つまり、実際にはQuoも、こういう時代の潮流に乗っただけ、と捉えた方が自然なのではないか。

 ただ、ちょっと稚拙というところがポイントで、多分メンバー自身も「これに乗っていてもやっぱり先は無いな」と思っていたのではないか。そこで、アルバムと、先行シングルで出来の良かったへヴィなブギー路線、これを押し出していく、という方針が漠然とでも見えていたのではないか、という気がする。

 注目したいのがShy Flyで、まだぼんやりはしているものの、後の8ビート系ゴリゴリブギーの原型と思えるグルーヴになっている。これは次作では一旦姿を消すが、Vertigo移籍後には中心的な路線となるのはご存知の通り。

 Vertigo移籍後、浦ジャケに過去アルバムのアイコンが載るようになる。そのスタートは次作のDog Of Two Headだ。Ma Kelly〜ではないのだ。その理由ははっきりしている。明らかにこれは過渡期の作品。確かに、Dog〜もまだ焦点は定まっていないけど、ブギーナンバーのサウンドが明らかに自信満々になっている。こういうところが、この2枚の差なのではないかな、と思うわけだ。

2014年5月11日日曜日

The Beatles / Yellow Submarine

 イエロー・サブマリンが好きだ。

 映画としても勿論大好きだ。映画というか、映像かな。やっぱりあのグラフィックの美しさ。ポップだし、サイケだし、可愛いし。ブルーミーニーズのモンスターたちの造形も最高だし、ビートルズだってそうだ。ジョージだけ妙に地味じゃない?とは思うけど。ちなみにデザインをピーター・マックスだと思ってる奴は死刑な。ミルトン・グレイザーでもないから。ハインツ・エーデルマンさんですからね間違えるんじゃえぞよろしくお願いします。

 ストーリーもいい塩梅にチープでハッピーだから素敵きわまりない。Ereanor Rigbyのシーンはテリー・ギリアムみたいだし、All Together Nowはポンキッキみたい。

 アルバムも好きだ。何が好きだってジョージの曲が割合で言えば一番多いってのが最高だし、その2曲はどっちも俺のフェイヴァリットに近い。特にIt's All Too Much。8分のフルヴァージョンが公式発売されればいいのになあ!ジョージ版のStrawberry FieldsみたいなOnly a Northern Songは「サイケポップとして(俺基準)」は最高傑作だと思うし。それにレノンの最高のハードロックHey Bulldog!まあこの3曲があれば何も言うことはないのだけど。いや、All Together Nowも最高に楽しいですけどー。ポールもOut Thereツアーで演ってるしね。

 だけど俺は、実はB面のジョージ・マーティンが好きなのよ。だからソングトラックじゃなくて、オリジナル盤じゃなきゃ駄目なの。特にオープニングPepperland、この曲はビートルズの楽曲に匹敵する名曲だと思ってる。ビートルズのアルバムに入って何一つ遜色のない楽曲だよ。

 そんなワケで、あまり所謂「グッズ」に興味のない俺が例外的に妙に買うのがイエロー・サブマリンものなのね。Tシャツは4枚(長袖1枚、半袖3枚)持ってるし、リヴォルヴァーのTシャツも持ってるからある意味5枚だ。(ちなみにビートルズのTシャツはほかに1枚しかもっていない)グラニフのイエロー・サブマリン、もう一枚欲しいのあったんだけど断念したんだよな。あとは大好きなデザインだけど女性用しかなかった奴な。

 Tシャツ以外にも色々あるよ。ピンバッジ、ネクタイ、マグカップ(割れちゃったから接着してペン立てにしてる。どこに行ったんだっけな……)、携帯ストラップ(は、紛失した)、ゲーセンで必死で取った時計、コレは上の潜水艦が揺れるという優れものですぐ揺れなくなる。缶バッジも3つくらい持ってたかな。ヤフオクで見たリュックは流石に買ってないのだけど……。いや、欲しいんだけどさ……。フィギュアも買ってないな。最近発売されてたボブルヘッドは少し欲しいねえ。

 それから最近出たVANSのスニーカー!三種類出たけど俺が買ったのはご覧の通り、勿論のハイカット。そもそもハイカット好きだし、デザインがOnly a Northern Songじゃん?他の選択肢無いじゃん?

 え?レビューじゃないよ。グッズ自慢がしたかっただけだよ。


2014年5月8日木曜日

The Rutles

来日記念でスーパーバンドとしてラットルズを捉えなおしてみたい。俺は行かないけど。

 この場合いったんエリック・アイドルの存在は抜く。勿論モンティ・パイソンのエリック、というのは充分スーパースターで、スーパーバンドのメンバーとしても相応しいのだけど、実際にはバンドとしてのラットルズには参加していないからだ。

 リーダーのロン・ナスティことニール・イネスは元ボンゾ・ドッグ・バンドの中心人物。スーパーである。文句のつけどころも無い。ギター(録音では一部ドラムやベースも)のスティグ・オハラことリッキー・ファター、彼は南アフリカ出身のバンド、フレイムのドラマーであり、同じくメンバーのブロンディ・チャップリンごと70年代のビーチ・ボーイズに正式メンバーとして参加していた。サポートではない。スーパーである。そしてバリー・ウォムことジョン・ハルジーと、レポ、及び一部ダーク・マックイックリーの吹き替えを演じたオリー・ハルソール、この二人は共にプログレ/ジャズロックバンドのパトゥのメンバーだった。スーパーなのは言うまでもないが、実はこの人たち、ビートルズ風のシンプルな演奏で分かりにくいが演奏力が物凄くスーパーである。ジョン・ハルジーをバリー・ウォムとして使うことが如何に贅沢か、って話をビートルズ(だけ)マニアに伝えてやりたいものなのだけど、通じないのだろうかなぁ。

 ところで、話は違うと言えば違うのだけど、レコーディングにベースで参加しているアンディ・ブラウンという人物がいる。この人が何者なのか良く分からないのだけど、俺は「もしかしてアンディ・ボウンなのではにか?」と思っている。

 アルバムのレコーディングが78年ごろ。この時期ボウンは勿論クォーのサポートメンバー(事実上のフルタイム参加)として活躍してるのだけど、80年、何故かピンク・フロイドのThe Wallツアーに「ベースで」参加しているのだよね。で、しかもこの関連資料に「Andy Brown」と誤記されているものを見かけたことがあるのよ。

 更に言えば、The Wallツアー後半戦でスノーウィ・ホワイトに代わってギターで参加したアンディ・ロバーツ、彼もニール・イネス人脈のひとで、ここでイネス⇔フロイドの妙な繋がりが見えてくるような気がする……ってのは、勿論「ブラウン=ボウン」という俺の思い込み前提なのでこれを裏付ける資料がない以上、信憑性は無いのだけど。

 そうすると「ボンゾズ+パトゥ+ビーチボーイズ+クォー」っていうスーパーバンドだ、って捉えられてうれしいなあ、って話でもあるのだけどね。

2014年5月6日火曜日

Deep Purple / Smoke on the Water

20代の頃はもうすっかり飽きていて、一生分聴いたなんてうそぶいていたけど、40過ぎてから何故か意識してこの曲を聴く機会が増えてきた。ライヴ盤の流れでなんとなく聴くんじゃなくて、ちゃんと「Smoke on the Waterを聴こう」って思って聴く機会が出来てきた。コレは俺にとってはかなり不思議な出来事。聴きたいんだよね、不思議と。

 あえて言えば、ホントつまんない曲だよね。一本調子でグルーヴもシンコペーションもないリズム。歌はぴったり音符の上に綺麗に収まって、ドラムは16分音符を叩くけど16ビートは叩かない。オルガンは暴れないしギターは端正なフレーズを弾く。ベースもきっちり8分音符。歌詞はスイスで起こったことを何の捻りもなくそのまま歌う。面白いこと一個もない。

 こんなクソみたいな曲が何で受けたんだ、と。

 いや、だってさ、もうどうしようもなくポップでキャッチーだもんね。過激なハードロックでも何でもないんだよ。単なるポップソングなの。ひたすらわかりやすくて、聴きやすくて、耳当たりのいいフレーズが一杯あって、シンプルで、リズムもソロも安定してて、何も逸脱しないから安心感があって、歌詞も難しくなくてわかりやすい。

 えーとね、逆説的に貶してるんじゃないのよ。

 むしろ逆でさ、ガキの頃つまんねえ、って思った部分が、ポップをちゃんと消化してあまつさえアイドルまで聴くようになった耳にはもうドンズバで響くのね。わかりやすいのって圧倒的に正義なんだよ。特にポップミュージックの世界ではね。コレに文句言う筋合いは何処にもねえんだ。それが解るのは退行じゃなくて進歩なんじゃないかなあ、ってのは自己正当化かねえ。

2014年5月4日日曜日

Deep Purple / Live in Japan

 いや、豪華版が出たタイミング関係なくて。買ってないし。あれ?まだ出てないんだっけ?よくわからん。

 73年ツアーの、名古屋公演(6/24)の音源を聴いたのよ。この翌日の武道館がヒドいコトになってた、って有名なエピソードじゃん。曰く「Live in Japanの曲目をなぞっただけのやる気のないコンサート」。それに怒った観客が武道館を破壊した、って話。

 あえて言えば、このライヴが極端に駄目かってーとそんなコトは無いと思う。ってか、パープルってプロ集団だから、そこまで大きくは崩れようがないんだよね。だから、客席で感じる「圧」はわからないけど、今ブートで聴く範囲では特別に悪くはない。それなりにテンション高い演奏してると感じる部分もある。ミスはあるけど、それは「伝説の」Live in Japanでもあるわけでさ。
 あと、この2010年代だったらさ、名盤「Live in Japan再現ライヴ」って言ったら凄いコトですよ(笑)しかも同じメンバーでね。何万円払っても見る奴居るでしょう(笑)

 いや、リリースされたばかりのアルバムからの新曲無し、っていうのは明らかに「やる気がない」って思われるよなあ。海外ツアーではなんとかMary Long演ってるのにそれさえカットしちゃってなあ。40年前のアルバム再現ならノスタルジーも良いのかも知れないけど、前年のアルバム再現されてもノスタルジーどころじゃないし、ってか現役のバンドとしてどうなのよ、って言うね。

 でもさ、前述のとおりなんだけど、要するに「ルーティーンで同じコト演るのが許されない」って時代はやっぱ良かった、って言い方は嫌だけどさ、健全だった、っていうか、なんていうか、求めているのが娯楽と言うより刺激だったのかな。なんか「大人のロック」的な物言いで自分に腹が立つけど、このブートレッグ聴いてそう言わざるを得ない一面があるのだなあ、と思ってしまったのよ。

2014年5月1日木曜日

George Harrison / 慈愛の輝き


 ビートルズのソロの場合、セルフタイトルのアルバムに付けられた邦題が素晴らしいというパターン、というのは勿論「慈愛の輝き」と「ジョンの魂」のことで、「マッカートニー」と「リンゴ」には邦題がない。

 「ジョージ・ハリスン」っていう邦題は(忘れ去られてるけど)All Things Must Passで使われちゃってたから、っていう事情はあるのだろうけど、「慈愛の輝き」は素晴らしすぎた。ジャケのイメージで付けたんだろうねえ。ひたすら優しい雰囲気のジャケと、ひたすら優しい雰囲気の楽曲だったからあまりにもぴったり来たんだな。普通このアルバムを見て、聴いたら「ああ、慈愛の輝きだね」って思うはずだ。

 「慈愛の輝き」に満ち溢れた収録曲群が全部よいのを今更語るべきかどうか迷うんだけど、如何せんジョージのアルバムは聴いてない人も多いかもしれないので語ってしまうべきだろうか。全曲語るか。うん、語ろう。

 Love Comes to Everyone……いや、「愛はすべての人に」ってもうこの勢いで邦題で行くけど、これはもうこんないい曲があるのか、ってくらいいい曲で。エリック・クラプトンとスティーヴィー・ウィンウッドが無駄に参加してるんだけど全然目立ってなくて(笑)まあそんなものはどうでもよくて、多分世界一優しい曲。こういうこと言うのは死ぬほど恥ずかしいけど、何度か救われた。
 
 Not Guiltyは邦題が無い(ってか実は邦題は2曲しかない)のだけど、お前まだ「無罪」とか言ってるのか……って話ではなくて、有名な事実だけどWhite Albumの時のボツ曲をリメイクしたもの。俺が割と早い時期にこのレコードを買ったのはこの曲に対する興味(と、もう一つ)だったんだよね。ビートルズ時代のアレンジはヘヴィ、というよりもっさりした感じだったけど、再演時にはすっかりお洒落になって、まあ、結局ここまで温存されたんだろうね。誰の意思でもないのかもしれないけど、出るべきタイミングってのがあったんじゃないかな。

 で、興味を持つ切っ掛けのもう一つが勿論Here Comes the Moonで、要するに2曲続けてビートルズ由来が続くわけで、まあソロへの足がかりには丁度良かったよね。「Sun」の方とリズムアレンジで韻を踏んでたりとか仕掛けも面白いけど、とにかく可愛らしくて良い曲。再興に居心地がいい。ああ、ハワイで書いたのか。海から月が昇ってくるような雰囲気があるとは思ってたんだけど。
 
 なんか曲が関連性で並んでるのかな。Soft Hearted Hanaもハワイの地名から付けられたタイトルで、オリエンタルな雰囲気のある曲。次作でホーギー・カーマイケルを2曲カヴァーするけど、それを自作でやった感じかな。エンディングでピッチいじってるのは何なんだろうね?

 Blow Awayを最初に聴いたんだよ。当時テレビでビートルズ特集があって、ソロ曲も幾つか放送したんだけど、リンゴの「バラの香りを」とかコレとか、今考えると少しレアな曲が観れて。勿論当時はよく知らないから代表曲だと思うじゃん。だからこの曲も含めてコレ買った切っ掛けだね。ビデオも可愛いけど(アヒルちゃんとジョージのにんまり笑い!)、楽曲もポップで、シンプルで、可愛くて、やっぱり優しくて。リハビリ的に書いた曲だというし、だからシンプルなんだろうけど、ジョージは装飾過多になりがちな気質もあるからこの曲の無駄の無さは本当に素敵だなあ。

 Fasterに関しては、友達に聴かせたときに凄い的確な表現をされたのが印象的。勿論、F1にインスパイアされた曲なんだよ、という話をしたのだけど(彼はF1ファンだった)「なんか金曜日のフリー走行を芝生でのんびり眺めてるみたいな曲だな」っていや、まさにそれ。ジョージはガンショットとか爆音入れてスピード感を狙ったんだろうけど、そんなテーマで曲書いても優しくなってしまうのがやっぱり「慈愛の輝き」なんだよねえ。

 Dark Sweet Ladyはオリビアのことを歌った曲で、コレもひたすら優しい曲。ってか恋人からこんな曲作ってもらったら凄い気分だろうな!ってなんで俺は女性の側に感情移入しているのか。A面のハワイコーナーと共通するゆったりした空気感があるね。

 「永遠の愛」って邦題は忘れてたな。Your Love is Foreverだけど、この曲も同じような空気が漂っていて、アレンジも似ているし、そしてオリビアへのラヴソングというのも共通。こっちの方が更にゆったりしているけど。全編チル・アウトしてるアルバムだけど、ここでもうリラックスし尽くす感じだね。へえ、「慈愛の輝き」ってこの曲の歌詞からとられたのか(Wikiより)。

 Soft TouchとSoft Hearted Hanaってタイトルが似てる上に、各国盤のシングルでBlow AwayまたはLove Comes to EveryoneのB面にどっちかが入ってるって言うややこしい状況だから厄介。俺はどっちも持ってるけど、何故かどっちもSoft Hearted Hanaが入ってるヴァージョンだった。Soft TouchがB面の7インチ欲しい。
 いや、コレは余談。この曲もタイトル通りのソフトな曲で、前2曲よりリズムが立ってるけどそれでもひたすら柔らかい。この3曲の並びでリラックスできない人は相当病んでるから病院行った方がいいかもしれない、ってレベルの。いや、病院行く前にアルバム通しで聴いた方がいいけど。

 ラストがIf You Believe。ゲイリー・ライトとの共作だってことは忘れてたな。B面では一番キャッチーかもしれない。スライドがやたら気持ち良いのだよな。シングルにはならなかったんだよね。まあ、他のシングルも売れてないからしょうがないけど。しかしこんな良い曲ばかりなのに売れないってどういうコトなんだ。異常じゃないか。